第290章

川崎正弘は水原刃の執務室に陣取り、ひらりと手を振って野呂栞に笑いかけた。

「野呂嬢、おはよう!」

その笑顔が、どう見ても食えない。

野呂栞は口角を引きつらせる。「本来ならいい朝なんだけど。あなたを見た瞬間、怪しくなったわね」

川崎正弘は悪びれもせずに笑う。「野呂嬢、なに言ってんだ。俺たち、もう何年の付き合いだ? あのとき君のバスケが俺に当たらなきゃ、こんな縁もなかったんだからな」

野呂栞が目を見開く。「それ、水原隊長に聞いたの?」

――あれは彼女が適当にでっちあげた話だ。

「いやあ、野呂嬢ってほんと機転が利くよな。嘘の出来が良すぎて、俺ですら突っ込みどころがなかった」川崎正弘は...

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